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ディーゼルエンジン

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シリンダー内でピストンが空気を高圧に圧縮して高温にし、 そこに燃料を噴射することで自然着火させる構造を基本とする。

実用的な内燃機関の中ではもっとも熱効率に優れる種類のエンジンであり、 また軽油・重油などの一般的燃料の他にも、 様々な種類の液体燃料が使用可能である。汎用性が高く、 小型高速機関から巨大な船舶用低速機関まで様々なバリエーションが存在する。

圧縮されて高温になった空気に軽油や重油などのディーゼル燃料を吹き込んだ時に起こる、 自己着火(正しくは「発火」)をもとにした膨張でピストンを押し出す、 超拡散燃焼である。理論サイクルの分類では、 低速のものがディーゼルサイクル(等圧サイクル)、高速のものはサバテサイクル (複合サイクル)として取り扱われる。


ガソリンエンジンとの比較
メリットとして
オットーサイクルのガソリンエンジンと比較して、圧縮時の筒内が空気のみであるため、 プレイグニッション・ノッキングなどの危険がないことから高い圧縮比を維持できる。 同じ理由でデトネーションの発生が予混合気を使用したエンジンと比べて低く、 また、全域で排気圧が高いため、ターボチャージャーとの相性が良い。
空気過剰率が大きいため、作動ガスの比熱比が高く図示熱効率が高い
(投入したエネルギーに対して燃焼ガスの温度上昇に使われる割合が高い)。
出力制御を燃料噴射のみで行えるため、出力制御のためにスロットルバルブが必要ない
(自動車用はガバナー制御や吸気騒音低減のためスロットルバルブを持つ)。
そのため絞り損失(吸気損失・ポンピングロス)が小さい。
部分負荷時の燃料消費率が低く、同じ仕事に対する二酸化炭素の排出量が少ない。 端的には燃費が良くなる。これがヨーロッパでのディーゼルシフトの最大の要因であり、 世界初となった3リッターカーの実用化もディーゼルエンジンなしでは困難であったと思われる。
高回転運転には不適(2.0l 4気筒の実用上限回転は4,800rpm程度)なため、 同排気量あたりのガソリンエンジンと比較して表示上の最高出力は低い。 しかしながら、実用トルクの発生回転数がガソリンエンジンに比べて低く、 しかもフラットな特性であるため、むやみに回転を上げる必要が無い。 実用回転域が下がることにより、機械的な損失が減り、燃費の向上にも寄与している。
ガソリンエンジンには点火時の炎の伝播速度によりシリンダの直径(ボア)に限界があるのに対し、 ディーゼルエンジンには限界が無いので大型化に適している。 ガソリンエンジンでは、多気筒化で排気量を確保して高トルクを得るか、 または、高回転化で出力を上げなければならないのに対し、 ディーゼルエンジンでは1シリンダーあたりの大容積化が可能であり、 構造が単純化出来る。また、大型化に適しており、大型化することにより熱効率が高まる。
2ストロークターボディーゼルとした場合、2ストロークの長所を活かし、過給で短所を補う事が出来る。

デメリットとしては
機関自体に高い強度と剛性が必要で、噴射ポンプやタービンなどの補機も加わるために質量が大きくなりやすい。
燃料噴射システムに高い精度、高い耐久性が要求されるため、コストがかさむ。
自己着火に必要な高温を高圧縮で作るため、小排気量エンジンの場合、エネルギー損失が多い
(超大型では圧縮比が11〜13程度で済むので効率が良い)。
高圧縮のため、振動や騒音が大きくなりがちである。
高圧の燃料噴射系の騒音が大きい。
脈動が大きく、吸排気系の振動や騒音が大きい
(船舶用、コジェネレーション用では脈動を抑える為、アキュムレーターを備えた物もある)。
吸気管負圧を得にくいため、自動車において、それを動力源とするブレーキブースターなどを ガソリンエンジン車と共用する場合、別途バキュームポンプが必要。
燃焼室内が空気過剰(窒素過多)で窒素酸化物が発生しやすい。
希薄燃焼域(軽負荷時は 30:1 から 60:1)での運転が多いために排気中の残留酸素が多く、 酸化性雰囲気になる為、三元触媒が使えない。
拡散燃焼なので均一燃焼が難しく、黒煙や粒状物質(PM, パティキュレート・マター)が発生しやすい。
高地など気圧の低いところでは更に不完全燃焼による黒煙が多くなる。
従来の後処理デバイスではガソリン車より有害排出物が多いため、現在の日本や米国の法制度では、 ヨーロッパ製のディーゼル車も排出ガス規制を満たしていない。
などが挙げられる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』